原産品判定基準
FTA/EPAで関税優遇を得るためには、「その国で作られた」ことを証明する必要があります。
FTA/EPAでは、輸出するどの商品にも優遇関税が適用されるわけではありません。
図にあるように、経済国境を広げ、関税という国の障壁を取り外すのがFTA/EPAですので、関税の優遇があるのは当然輸出国(正確にはこの協定内の国)で生産される必要があり、また、そのことが証明されないと適用されません。
その証明の基準となるのが「原産品判定基準(Rules of origin)」なのです。
この基準内容はそれぞれの協定の中に書かれていますので、使いたいFTA/EPAの協定を読むことがまずは大事です。産品での適用すべきルールが書かれています。
ただ、大体のルールは世界中でほぼ共通と言え、下のように3つのルールがあります。
加工工程基準: 何の加工を施したか
日本で作ったということを証明するのは簡単なようで、難しいことです。客観的に評価できることが求められるからです。
一番明確な基準が「どのような加工を施したか」ということ。工程をルールに明記し、その工程を施したら「その国で作った」とするわけです。
この基準を「加工工程基準」と言います。
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英語では、Specific Process Rule (略してSP)
特に、日本か関係するFTA/EPAでは、繊維製品や一部化学品などに用いられている基準です。
発給される特定原産地証明書には使用材料・部材や工程の内容を具体的に記述することになります。
また、繊維関連に関しては、その基準に関して注釈がつくケースが少なくありませんので、品目別規則をチェックする前に、その商品の大分類の説明もチェックしておきましょう。
関税番号変更基準: 関税番号が製造によって変るかどうか
(HSコード)
輸出の際にHSコードというものが必要になります。
HSコード(Harmonized Commodity Description and Coding System: 商品の名称および分類についての統一的システム)とは、1988年に国際貿易商品の名称と分類を世界的に統一したものです。
これによって、各国の関税がきまり、FTA/EPAのルールも決まっています。
HSコードは最初の6桁が世界統一コードで、残りの3~4桁が各国での裁量で使われるコードです。
最初の6桁も、各2桁ずつに部、類、項と分けられています。
(関税番号変更基準)
関税番号変更基準は、生産される製品のHSコードがすべての非原産材料(つまり輸入された材料)のHSコードと異なるものになれば、その産品を原産品とする基準です。
英語ではChange in Tariff Classification
(略称:CTC)
つまりは、輸入したモノが生産によって違うモノに変化した(HSコードが変った)、変化したのだからその国で「作られた」とするというルールです。
逆に、HSコードとして「エンジン」を輸入して「エンジン」を作ったとしたら、その国の製品ではないということです。
関税番号変更基準にはレベルが3つあります。号変更ならば変更となりやすいですが、類変更であればカバーされる範囲が広いので、適用はされにくいのです。
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類変更 又は、 CC(Change in Chapter)
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HSコードの最初の2桁で変更されるかどうか
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項変更 又は、 CTH(Change in Tariff Heading)
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HSコードの最初の4桁で変更されるかどうか
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号変更 又は、 CTSH(Change in Tariff Sub Heading)
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HSコードの最初の6桁で変更されるかどうか
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(救済措置:僅少の非原産材料、デミニマス)
作るのに小さい材料までHSコードが変るというのはかなり厳しいものになります。
ですので、商品におけるウエイトの小さい部材は無視していいという救済措置が「僅少の非原産材料(デミニマス)」です。
デミニマスの規定が適用されない産品もありますので、各協定の原産地規則を読み、適用をする必要があります。
(救済措置:累積)
上の図にあるように、FTA/EPAは国境をなくし、経済領土を広げることにあります。とすると、例えば日本とマレーシアのFTA/EPAでは、日本から輸出する時に日本産とするのは当然日本製の部材を使うことになります。
FTA/EPAの趣旨からすると、マレーシア製の部材も「日本製」として認めるべきであり、実際に認められています。
この考え方は「累積(Accumulation)」と言います。
付加価値基準: その国でどれだけの付加価値をつけたか
付加価値基準は、協定によって英語では様々な呼ばれ方をしています。一般的には以下の2つが多いです。
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VA (Value Added)
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QVC (Qualifying Value Content)
付加価値の計算式は、それぞれの協定で決められていますので、そのルールに従って計算する必要があります。
大筋では、以下のこととなります。販売価格は多くはFOBとなります。
(販売価格-非原産材料の価値)÷販売価格
つまりは、非原産材料以外のところでどれだけ価値をその国で付けているかを計算する方法です。ただ、一般的に言う付加価値とは違うことに気をつけてください。
付加価値基準では、ある一定の比率以上であれば合格ということで、この数値(閾値)が協定に明示されています。例えば、ASEANとのFTA/EPAでは、40%という閾値が多く使われています。