日EU・EPAでの関税撤廃スケジュールを記します。
今回は繊維・繊維製品です。
- 毛の糸・織物
- 即時撤廃、3.2~8%
- 綿の糸・織物
- 即時撤廃、4~8%
- 化合繊の糸・織物
- 即時撤廃、3.8~8%
- 不織布、特殊糸
- 即時撤廃、4~12%
- コーテッド織物類(工業用繊維など)
- 即時撤廃、4~8%
- 衣料品(ジャケット、ネクタイなど)
- 即時撤廃、6.3~12%
- リネン類(タオルなど)
- 即時撤廃、6.9~12%
注:%は2013年4月時点のMFN税率です。
世界で有利に戦うためのコツ
日EU・EPAの原産地証明書は、TPPに引き続き、自己証明とのことです。
いよいよ自己証明が趨勢になりそうですね。
EUは、FTAで検認を行うので有名です。
韓国とEUのFTAでも際だった検認(FTA利用における原産地証明の確からしさを輸入国から確認を要求すること)の数が記録されています。
年間に2800件以上、つまりは営業日当り13件弱の検認が韓国EUでなされています。これが日本になると経済規模からもっと多くの検認がされる事になるでしょう。
検認で「証明が否認」されれば、FTA活用で関税の減免を受けたメリット金額は全て払うことになることは当然として、追加でペナルティを支払うことになります。
日EU・EPAが自己証明となれば、企業側の運営は大変なことになります。原産地証明が正しくても、検認への対応をせねばならないし、もし間違っていたら、とても面倒なことになります。
その準備は今から初めても遅くはありません。
当社では、会社のFTA原産地証明が妥当かどうかの検証をするサービスをしております。
詳しくはこちらにリーフレットがあります。
とある商工会議所の原産判定に絡む証拠書類の確認の姿勢が変わってきました。
かなり厳格にされるようになったのはいいとして、おかしいと思われることが連発です。
例えば、
「うちでは付加価値基準では、積上げ式も控除式も認めていません。」
??? 付加価値基準を認めないって事?
今までかなり緩かったのが急な変化。証明の最終責任は企業なので、本来は緩かろうがきつかろうが関係ないので、企業は厳密な原産証明を行わねばならないのですが、責任を取らない商工会議所の姿勢の変化(と間違い)は企業の対応を困らせます。
対応とその知見に私が尊敬を抱く商工会議所もありますが、このような商工会議所があるのは困りものです。
別の商工会議所では、インド向けの証拠書類で、
「付加価値基準と関税分類変更基準の証拠はは同じページに記載しなさい。そうしないと通しません。」
???
そんなことどこにも書いていない。それも通さないって・・・
早く自己証明にシフトすべきではないでしょうかね。
アメリカの大統領選挙で、現在トランプ氏が有利です。
彼が大統領になればTPPはどうなるのか、皆さんは関心(憂慮?)があるかと思います。
TPPにアメリカへの無税での輸出の世界が広がる。ほんとその通りです。
それが、トランプ氏が大統領になることでどうなるか。いろいろなことが起こる可能性があると思います。
まず確実なことは、アメリカの要求で12カ国で署名されたTPPは再度協議にはならないということ。
ひょっとすると、レームダッグ状態ではありますが、トランプ氏の外交の危うさから彼の就任以前にアジアに対する布石となる議会承認を得られる可能性もあります。
ただ、どうなるかをいろいろ考えるのはよしましょう。
一番大事なのは、TPPであれ、ASEANとのEPAであれ、やらなければいけないこと、証明の証拠書類の準備することは変わらないということ。
トランプ氏の影響に一喜一憂するのではなく、TPP以外にも日EU、RCEPなどでも適用可能な原産地証明のプロセスをちゃんと確立することが何より大事です。
日EUは問題なく合意されるでしょう。TPPの結果を見てRCEPの協議のスピードは変わるかも知れませんが、たぶんやってくるでしょう。
それまでに、原産地証明の体制を確実にすることが、今現在も使えるアジアを中心としたFTAの活用においても大事なこととなります。
FTAでは、原産地証明で適用する原産地規則がかなり大事であると思っています。
原産地規則には3つの種類があります。
企業は適用基準を好きに選べるわけではありません。協定、及び輸出商品の該当するHSコードにより使える原産地規則が決まっています。多くの場合、CTCかVAの選択が出来るようになっています。
大型客船のような一品ものは、付加価値基準(VA)で問題はないとは思いますが、同じ商品が何度も輸出されるような場合は、関税分類変更基準(CTC)の方が断然使い勝手がいいです。
しかし、実際にはVAを使われる企業が多くあります。計算しやすいからとのことですが、私の経験からすると、むしろVAは証明するのが厄介です。
構成部材毎のコストを計算する必要がありますし、その計算根拠もちゃんと出せるようにする必要があります。また、VAの場合は本来は輸出毎に証明をする必要があるのです。現実はそれは無理なので、企業内でのルール作りをして、そのチェック頻度を企業として明確にして、原産性が維持されていることを確認続ける必要があります。
VAが使われるのに、「計算がしやすいから」という理由意外に別に理由があるととある人から聞きました。「監査法人は、VAの方が自分たちの専門性が生きるし、仕事も継続してもらいやすくなるから。」だそうです。
確かに。
原価計算、システム化では彼らに一日の長があります。一方、CTCで必要となるHSコードは素人に等しい。
どれだけ、本当なのかはわかりません。
ただ、多くの工業製品でCTCとVAの選択が出来る場合は、CTCにした方が企業にはメリットが多いし、相手国の検認にも強いですよ。
私の顧客のところでサプライヤー様向けのFTA説明会を開きました。
目的は、企業と同じレベルの原産地証明をしてもらうことにあります。企業が原産地証明の品質を向上させたところで、サプライヤーの証明(サプライヤー証明や同意通知)が駄目でしたら、検認の際に大きな問題になります。
できるだけわかりやすい説明会とその後のフォローが大切であることを過去の経験から痛感しており、今回もその経験を生かして行ったつもりです。そうしないとちゃんとした証明を行ってもらえないことが多いためです。
一方、このお客様には多くの納品先から、サプライヤー証明や同意通知をもらうべく、「データを下さい」的な要望が来ます。
彼らが要求している情報だけでは不十分なことが多いと感じます。これにより原産地証明が出来ていると考えている企業が多いことは正直怖いことです。
日頃、サプライヤーの原産地証明に関する認識を上げることが必要と感じていますが、その阻害要因になっているものの一つは、サプライヤーの顧客にもあるのです。
FTAの活用に関して学ばせて頂いた会社があります。
それをA社と呼びましょうか。
A社はメキシコとのEPAの時代から活用しており、その責任者は有名な方で、私も多くを学ばせて頂きました。
その会社の方からEPAの活用相談がありました。
???
という気持ちが本音のところでした。
「できるでしょうに。」
お会いしたところ、とても熱心な方で、メキシコ向けの商品で、VAで活用したくて、条件を満たさないのでどうしようかと悩んでいらっしゃいました。
そういうときは、影響の大きい材料の原産性に遡り、証明することになるのですが、ご存じなかったようです。
常日頃から、日本企業のFTA活用は個人に属しており、企業のノウハウ、体制で行われていないと感じていましたが、
「A社でもか」
という少し残念な気持ちとなりました。
日本の企業の方、FTA活用は是非組織戦でお願いしますよ